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大画面化がHD DVDへの移行を後押しする[遠藤] アナログのテレビ放送は50年も続いた映像文化です。それがまもなくデジタルハイビジョンにすべて切り替わる。この移行の意味が、日本ではまだちゃんと理解されていないと思うんです。ただ映像がきれいになるだけ。そう思われている。でも映像がきれいになると体験の質が変わってくる。どこかに画質の臨界点があって、そこを超えるとただの映像情報だったものが肌身の体験に変わってくる。そんな気がしています。 [長谷] それは画質だけじゃなく、画面サイズとの相関でしょうね。DVDが発売された当時、テレビの画面サイズは21インチから25インチでした。そのサイズではVHSビデオ映像のアラが目立ちはじめていた。だから高画質のDVDになった。いまテレビは65インチまで大画面化しています。そうなるとDVDの画質が粗くなり始めているんです。だからスクリーンサイズによって、現在のDVDとHD DVDとは、ある期間並存すると思います。 [遠藤] それすごくわかります。ウチはいま42インチですけど、たまに近くで見てたりすると、映像のアラが目立つ。ふつうのテレビ放送はもう粗くてしょうがない。 [長谷] でしょう。大画面のハイビジョン映像ならばこれまでにない映画体験もできる。それがさきほど言われた新しい映像体験ということだと思います。テレビはどんどん大画面化している。どんなに名作映画をたくさん抱えていても、時代に合わせてメディアも衣替えしなくては売れなくなってしまう。これはもう時間との戦いです。だからすぐにでもHD DVDを立ち上げたいんです。
HD DVDを選ぶ理由はDVDゆずりの「信頼性」[遠藤] ワーナーはいま何本ぐらいの映画を持ってるんですか? [長谷] ワーナー本社は約6500本の映画の権利を保有してます。『マトリックス』や『ハリー・ポッター』『ラストサムライ』といった最近の作品から、古いところでは『風とともに去りぬ』『カサブランカ』といった名作もワーナーですね。 [遠藤] あれ? 『風と共に去りぬ』はMGMじゃなかったですか? [長谷] もともとはMGMですが、86年以前のMGM作品はワーナーが買い取っているんです。 [遠藤] なるほど。 [長谷] 映画以外に『ER(緊急救命室)』『フレンズ』などのテレビ向け作品も数万ものエピソードがあります。パッケージベースでも業界トップシェアと言っていいと思います。 [遠藤] 現状で世界最大の映画ホルダーということですね。そのワーナーが次世代光ディスクにHD DVDを選択した。最大の理由は何だったんでしょう? [長谷] パッケージメディアとしての信頼性ですね。HD DVDは従来のDVDと同じ構造ですから、生産設備もふくめて既存のものを活用できる。現行技術を使えるということは信頼性が高いということです。世代移行のストレスが少ない。一般ユーザーと同様、映画会社にとってもそれは重要な条件ですから。 [遠藤] HD DVDで追加された新機能についてはどうでしょう? たとえばインターネットに対応する機能が追加されてますね。映画会社側で新機能を活かすアイディアは出てますか? [長谷] ビデオがDVDになって変わったことのひとつは、それまでお蔵入りしてした資料の価値が再発見されたことなんです。編集段階でカットされた未公開シーンやNG集、オリジナルの絵コンテ、制作スタッフのインタビュー。そういう大量の関連資料がDVDで再活用されることでバリューを持つようになった。今回のHD DVDではネットワーク機能が追加されています。これは現在形の関連情報をユーザーに提供できるということです。たとえば監督や俳優の作品リストは最新のものをリアルタイムで提供できる。関連商品のサイトにジャンプしたり、最新関連作の予告編を見せることもできるでしょう。そういう意味でまた新しいバリューが生まれるんじゃないでしょうか。 [遠藤] HD DVDでとくに注目すべき新機能というと、他には何がありますか? [長谷] ちょっとマニアックな機能としてフィルムグレインテクノロジー(FGT)があります。これはなにかというと、映画フィルムの粒子感を再現するテクノロジーなんです。映画はデジタルになって確かにキレイになったけれども、どうもカキッと鮮明に見えすぎる。映画監督のなかには映画館で見るフィルム映像のざらつき、粒子感を残したいという方がおられる。FGTを使うと、デジタル映像だけどもデジタルっぽい画質ではない、映画館で見た映像に近い質感が得られる。つまり映画館の体験をそのままハイビジョンにするテクノロジーなんです。
家庭の本格映像時代はHD DVDで幕を開ける[遠藤] 最近の映画業界でのデジタル化の取り組みについて話を聞かせてもらえますか? [長谷] 本格的に作品のデジタル化がはじまったのはDVDを開発し始めた頃からです。ワーナーはDVDのときも他社にさきがけて発売したくらいで、当時からデジタル化には非常に積極的でした。現在はとにかく映画に関わる全フェーズでデジタル化が進んでいますね。フィルムレスのHDカメラでの撮影、みなさんよくご存知のCG合成、編集作業のデジタル化、さらにはフィルムにしないで劇場にもっていくデジタル伝送までデジタル化を進めています。 [遠藤] 古い作品もほとんどデジタル化されてるんですか? [長谷] 作品本編、基礎データのデジタル化はほとんど済んでいるようです。ですからこれから出てくるHD DVD、あるいは光ファイバ、さらには携帯電話への映像配信といった、いろんな変化に即応できる体制は整ってきてますね。 [遠藤] そういうさまざまなデリバリーの形態が見えてきたなかで、HD DVDの位置づけというか、期待する部分はどこなんでしょう? [長谷] 原点は劇場の興奮を家庭に持っていくことですよ。大画面になって、ハイビジョンになって、映画館の感激をお茶の間に持ち込む環境が、ここにきてさらに進化している。ネットワーク配信というのもありますが、実際にはまだ家庭側でのインフラが整備されていない。大画面テレビにLANが繋がっている家庭はまだまだ少ない。そういう意味でHD DVDのほうが現実的で安定したメディアでしょう。 [遠藤] ホームシアターはHD DVDで本物になる? [長谷] そう。そして本格的な映画ライブラリーを家庭につくってもらえる。それが我々の期待です。アメリカ人はビデオライブラリーが好きなんですね。友人宅にいくと、ちょうど日本の家庭の本棚に文庫本がならんでいるように映画のライブラリーがある。映像と暮らすライフスタイルが根付いてる。そういうライフスタイルもふくめて、日本でも家庭における本格映像時代が到来する。そのきっかけとなったメディアがDVDだったのであり、そして約10年を経て今、さらなる成長・進化がなされたのが、HD DVDだと思っています。
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