2000年12月8日
Gigabyteの「GA-7DX」は、SDRAMの2倍のデータ転送レートをもつDDR SDRAMに初めて対応したAthlon/Duron用のSocketAマザーボードだ。順調に高クロック品をリリースし好調なセールスを続けるAthlonの次世代プラットフォームの実力はいかに? 仕様の解説、そして、気になるパフォーマンスをベンチマークによって検証していこう。
SDRAMの2倍の転送レートを実現する
DDR SDRAM対応マザーボードが遂に登場
Gigabyteから注目のマザーボード「GA-7DXC」が登場した。注目されている最大の理由は、なんといっても、このボードがDDR SDRAMをサポートした初めての製品だからである。DDRとは「Double Data Rate(ダブルデータレート)」の略で、その名のとおり従来SDRAMの2倍のデータ転送レートを実現したメモリ。SDRAMと同様に、クロックジェネレータからの100MHzや133MHzのクロックを使ってタイミングをとるが、そのクロックの立ち上がりと立ち下がり、両方に同期してデータ転送を行うことで、SDRAMの2倍のデータ転送レートを実現している。技術的にSDRAMの延長線上にあるため、コスト的にもSDRAMと競争力があり、SDRAMに代わる次世代メモリとして注目されている。DDR SDRAMは、従来SDRAM(3.3V)より低電圧の2.5Vで駆動、メモリモジュール「DDR DIMM」のピン数は184ピンで、従来SDRAM用の168ピンDIMMソケットには差さらないようになっている。
そのDDR SDRAM、モジュールとしては現状、下記の(少量であるが)2種類が出回っている。
- PC1600 DDR SDRAM(CL=2):DDR200チップ(CL=2)を搭載、64bit/200MHzでデータ転送、データ転送レート1.6GB/秒
- PC2100 DDR SDRAM(CL=2.5):DDR266チップ(CL=2.5)を搭載、64bit/266MHzでデータ転送、データ転送レート2.1GB/秒
いささかややこしく感じるかもしれないが、「DDR200」「DDR266」というのはDDR SDRAMのチップ自体の呼称で、チップを搭載したメモリモジュールのことは、それぞれ「PC1600」「PC2100」というバンド幅で呼称することになっている。なお、「CL」というのは、メモリの「CAS Latency(キャスレイテンシ)」の略で、メモリのアドレスを与えてからデータの入出力が可能になるまでの遅延時間。メモリ内のデータは格子状に格納されており、行アドレスを指定したあと、列アドレスを指定してデータを呼び出す。「CL=2」とは、列アドレスを指定してからデータの入出力が可能になるまで2クロックかかるということを指している。また、近い将来にはCAS Latencyが2クロックのDDR266チップを搭載した「PC2100 DDR SDRAM(CL=2)」も登場する予定となっている。
そのDDR SDRAMをサポートしたチップセットとしては、AMDの「AMD-760」や、ALi「ALiMAGiK 1」、VIA「Apollo Pro266」などが発表されているが、市場に登場してきたのはAMD-760が初めてだ。AMD-760は、200MHzと266MHzのFSB、PC1600とPC2100のDDR SDRAMに対応する、期待のAthlon、Duron用チップセット。North Bridgeの「AMD-761」とSouth Bridge「AMD-766」の2チップで構成されるが、South BridgeにはVIAの「VT82C686B」(以下、686B)を使うこともできる。各社から公開されている仕様を見ると、こちらが使われることが多いようだ。スーパーI/OやAC'97オーディオコントローラを内蔵など多機能であることや、Apollo KT133やApollo Pro133Aなど過去のチップセットで実装のノウハウが蓄積されていることなどが理由だろう。このAMD-761に686Bを組み合わせた構成のチップセットを何と呼称するのかは微妙なところだが、ここでは「AMD761+686B」としておく。チップセットの機能比較は表に示したので参照してほしい。
| チップセット名 |
AMD-760 |
Apollo KT133(A)(※1) |
ALiMAGiK 1 |
i850 |
| North Bridge(MCH) |
AMD-761 |
VT8363 |
M1647 |
82850 |
| South Bridge(ICH) |
AMD-766/VT82C686B |
VT82C686B/VT82C686A |
M1535D+ |
82801BA(ICH2) |
| 対応CPU |
Athlon/Duron |
Athlon/Duron |
Athlon/Duron |
Pentium 4 |
| FSB |
200/266MHz |
200MHz(200/266MHz) |
200/266MHz |
400MHz |
| CPUバス最大帯域 |
2.1GB/秒 |
1.6GB/秒(2.1GB/秒) |
2.1GB/秒 |
3.2GB/秒 |
| メインメモリサポート |
DDR SDRAM、SDRAM |
SDRAM、VC-SDRAMほか |
DDR SDRAM、SDRAM |
DRDRAM 2チャンネル |
| メインメモリデータクロック |
266MHz |
100/133MHz |
266MHz |
800MHz |
| メインメモリ最大帯域 |
2.1GB/秒 |
1.06GB/秒 |
2.1GB/秒 |
3.2GB/秒 |
| メインメモリ最大容量 |
4GB |
1.5GB |
3GB |
2GB |
| AGP |
1x/2x/4x |
1x/2x/4x |
1x/2x/4x |
1x/2x/4x |
| IDEコントローラ |
UltraATA/100 |
UltraATA/100/UltraATA/66(※2) |
UltraATA/100 |
UltraATA/100 |
| IDEバス最大転送速度 |
100MB/秒 |
100MB/秒/66MB/秒(※3) |
100MB/秒 |
100MB/秒 |
| PCIバスマスタ |
6 |
5 |
6 |
6 |
| チップセット間バス |
PCIバス |
PCIバス |
PCIバス |
Hub Interface |
| チップセット間帯域 |
133MB/秒 |
133MB/秒 |
133MB/秒 |
266MB/秒 |
※1 Apollo KT133Aは、KT133のFSB266MHz対応版
※2 South BridgeがVT82C686Aの場合
※3 South BridgeがVT82C686Aの場合
AMD-761搭載マザー一番乗り
DDR SDRAMはPC1600のみのサポート
さて、ここからはGA-7DXCについて詳しくみていこう。これは、2000年10月末の「AMD-760」の発表会場で公開され、登場予定だった「GA-7DX」の機能制限版となる。その制限とはFSBとDDR SDRAMのクロックに関するもの。チップセットレベルではサポートしているにもかかわらず、ボードレベルではFSB266MHzとPC2100 DDR SDRAMの動作保証をしないというものだ。その理由は明らかにされていないが、FSB266MHz対応のCPU自体が、まだ市場に登場していないことなどを考慮した処置だと思われる。
また、まだDDR SDRAMモジュールが市場に潤沢に出回っていないことを考慮してか、128MBのDDR SDRAMモジュールをセットにして販売されている。ところが、そのメモリモジュールはES品だということが判明している。ESとは「Engineering Sample」の略であり、OEMメーカー向けのテスト用サンプルのことだ。しかも、GA-7DXCでは動作保証外となっているPC2100対応モジュール、もちろんこれはPC1600モジュールとして動作させることができるのだが、とにかく仕様的に謎の部分が多いマザーボードだ。(FSB200MHz/PC1600環境での使用に関しては)ボード、メモリともに代理店であるバーテックスリンクの1年保証が付くものの、とても一般向けの製品とは言い難く、「とにかく早くDDR SDRAMシステムを使ってみたい」といった人柱向けアイテムという印象は拭えない。
さて、ボードのハードウェア的仕様は、先に発表となった「GA-7DX」とまったく同じ。チップセットは、North BridgeにAMD-761、South BridgeにVIAの686Bを採用している。拡張スロットは、AGP×1、PCI×5、AMR×1、という構成。オーディオ機能は、686B内蔵のAC'97機能は使わずに、別途クリエイティブのサウンドチップ「CT5880」をオンボード実装、4チャンネル出力、S/PDIF出力を可能にしている。
FSB設定クロックは、1番目のPCIスロット脇にあるディップスイッチで8通りに設定可能。DDR SDRAMのクロックは任意には設定できず、FSB設定クロックを100MHz(つまりFSB200MHz)に設定すると200MHz動作、同じく133MHz(FSB266MHz)に設定すると266MHz動作となるようである。CPUコア電圧やI/O電圧などは自動設定、任意設定することはできない。新しいチップセットであることもあり、Gigabyteらしい堅い作りだ。発売されたばかりの新製品にもかかわらず、PCBのリビジョンはすでに「2.4」となっており、製品化までにはかなりの紆余曲折があったことが伺い知れる。
 |

North Bridgeである「AMD-761」。200/266MHzのFSB、PC1600/PC2100 DDR SDRAM、AGP 4xをサポートする。チップのリビジョンは「B2」と示されている。 |
 |

South BridgeにはVIAの「VT82C686B」を採用。先代Southである「VT82C686A」との違いは、内蔵のIDEコントローラがUltraATA/100に対応したこと。 |
 |

FSB設定クロックは一番目のPCIスロット脇にあるディップスイッチで8通りに設定可能。DDR SDRAMのクロックは、自動的にFSBと同じクロックに決定されるようだ。 |
ベンチマークテスト
DDR SDRAMの威力やいかに?
さて、ここからはGA-7DXCと付属のDDR SDRAMを利用して、さまざまなベンチマークテストを行い、Athlon&DDR SDRAMプラットフォームのパフォーマンスを検証していこう。CPU、HDD、ビデオカードには同じものを利用したイコールな条件でPC1600 DDR SDRAMプラットフォームとPC133 SDRAMプラットフォームを比較してみた。詳しいベンチマーク環境は次の表のとおりである。
また、販売元の保証対象外ながら、Athlon-1.13GHzを利用して、FSB133MHzでも動作させてみたのだが、動作はするものの、編集部の環境ではほとんどのベンチマークが完動しなかった。BIOSでメモリのレイテンシの値やAGP周りの条件を緩和してみたが症状は変化はなかった。現状ではFSB266MHz対応のCPU、マザーボードが他にないため、単なるパーツとの相性なのかCPUやマザーボード、メモリのどれかに原因があるのか切り分けることができないが、このあたりに動作保証対象外にせざるを得なかった理由があるのかもしれない。
| メモリ |
DDR SDRAM |
PC133 SDRAM |
| チップセット |
AMD761+686B |
Apollo KT133 |
| マザーボード |
GA-7DXC |
MSI K7T Pro |
| ビデオ |
Leadtek WinFast GeForce256/DDR(32MB) |
Leadtek WinFast GeForce256/DDR(32MB) |
| ビデオドライバ |
Detonator3(6.31) |
Detonator3(6.31) |
| HDD |
Seagate Barracuda ATAII 100 |
Seagate Barracuda ATAII 100 |
| OS |
Windows Millennium Edition |
Windows Millennium Edition |
| 追加ドライバ等 |
AMD AGP Miniport Driver 4.80、VIA IDE BusMaster Driver 2.1.50 |
VIA 4 in1 Driver 4.25a、VIA IDE BusMaster Driver 2.1.50 |
WV32-MEMORY
 |
編集部オリジナルのベンチマーク「WV32」。リード性能のみKT133環境に5%劣るが、ライトで23%、ミックスでは15%パフォーマンスアップして、総合では16%のアップ。CPUのクロックが異なると各種レイテンシや、2次キャッシュの速度に影響するため、単純な比較にはならないが、1.13GHzのデータも掲載している。CPUのクロックが異なるものの、PC2100(CL=2.5)ではライト、ミックスともにKT133(CL=3)に比べて42%の性能アップを見せている。FSB266MHz環境で完動させられたのは結局これだけだが、高いポテンシャルを感じさせる結果となっている。全般的にリード性能が低調なのは、現在のテストプログラムがメモリのレイテンシに大きく左右される設計になっているためのようだ。Athlonはメモリリオーダーバッファが大きく(=レイテンシに左右されにくく)、PentiumIIIに比べるとWV32でも比較的値が出るが、十分ではなかったようだ。 |
Super π
 |
最もポピュラーな104万桁。1024×768ドット/16bitカラー/85Hz。メモリ性能やディスク性能を大きく反映するプログラムとして有名だが、ここでは大きな成果を見せた。PC133(CL=3)比で16%、PC133(CL=2)比でも13%という明らかなパフォーマンスアップを見せている。 |
ベンチマークテスト・2
アプリケーションレベルでも着実な性能アップ
SYSmark 2000
 |
1024×768ドット/16bitカラー/85Hz。BAPCo(http://www.bapco.com/)製のポピュラーなベンチマーク。実際のアプリケーション上でのオペレーションをシミュレートするもの。全般的にDDR SDRAMの効果が表れているが、特にクリエイティブ系のアプリケーションでアドバンテージが大きく、全体では、PC133(CL=3)比で6%、PC133(CL=2)比でも5%増の数値を記録している。 |
Excel 2000
 |
ASCII Lab.製Excel 2000ベンチマーク。1024×768ドット/16bitカラー/85Hz。比較的メモリ性能を反映するプログラムだが、PC1600環境ではPC133(CL=3)比で7%、PC133(CL=2)比で1%のパフォーマンスアップが見られる。 |
3DMark 2000 Ver1.1 (1)
 |
madonion.comの3Dベンチマーク。1024×768ドット/16bitカラー/85Hz。ビデオカードのHardware T&Lを有効にして測定した。PC1600環境は、PC133(CL=3)比で3%、PC133(CL=2)比で1%の性能アップ。 |
3DMark 2000 Ver1.1 (2)
 |
同じくmadonion.comの「3D mark 2000 Ver1.1」。こちらはHardware T&Lを使わず、Optimizationは「Athlon」を選択している。頂点演算などのジオメトリ処理もすべてCPUで行うため、「CPU 3D marks」の値にメモリの帯域の差が顕著に表れている。PC133(CL=3)比で、15%、PC133(CL=2)比でも9%の性能向上が見られる。 |
e Jay MP3 Plus 1.3
 |
「e Jay MP3 Plus 1.3」は、キヤノンが海外で販売してるMP3エンコーダソフト。エンコードエンジンは午後のこ〜だをベースにしており、3D Now!に最適化されている。数値は、585MBのWAVファイルをエンコードするのにかかった時間を示している。MP3のエンコード処理はとにかくCPUそのものの能力に依存する傾向があるが、ここでもメインメモリ性能はまったくと言っていいほど反映されていない。PC1600は、PC133(CL=2)にわずかに劣ってしまっているが、このベンチマークの精度的にこの程度の差は誤差といえる。 |
Windows Media Encoder 7.0
 |
MicrosoftのWindows Media Encoder 7.0を利用したベンチマーク。30秒間のAVIファイル(320×240ドット)をMPEG4にコンバートするのにかかった時間。CPU性能にも大きく依存するテストだが、メインメモリ性能もかなり反映するようだ。PC1600プラットフォームは、PC133(CL=3)比で10%、PC133(CL=2)比で6%の性能アップが見られる。 |
現時点で最速のAthlonプラットフォーム
割り切って使用できる方にはお勧め
「GA-7DXC」を利用したPC1600 DDR SDRAM環境は、PC133(CL=3)環境を比較すると、メモリ性能が良く反映するテストなら10%以上、通常のアプリケーションレベルのテストにおいても5%程度の差をつけており、評判どおり優秀なパフォーマンスを発揮しているといえる。DDR SDRAMの転送レートが倍と言っても、PC1600 DDR SDRAMではPC133 SDRAMに対しては1.5倍強。この時点でこれだけの性能差が記録できれば十分だ。今回はPC2100 DDR SDRAM環境でのベンチマークがうまく動作しなかったが、WV32によるメモリベンチマークの結果を見ると、次世代のプラットフォームと言うにふさわしい性能が期待できそうだ。
さて、今回の「GA-7DXC」の評価だが、FSB266MHz/PC2100環境での動作を保証しないという独自の制限があり、しかも保証付きとはいえES品のメモリが同梱されたイレギュラーな商品だということを考れば、当然万人にお勧めできるようなものではない。ただ、FSB200MHz/PC1600 DDR SDRAMでの利用に限ればきわめて安定していて、トラブルも皆無だった。何よりも、現時点のAthlonプラットフォームにおいては文句なしの最高性能を叩き出すマザーボードであることは間違いない。FSB266MHzに対応したCPUは未だ市場に存在しないことだし、FSB266MHz/PC2100 DDR SDRAM利用時のの保証がないことや、メモリがES品であることを割り切って使用できる方にはお勧めできる。
| 製品名 |
GA-7DXC |
| メーカー |
Gigabyte |
| チップセット |
AMD-761(AMD)+VT82C686B(VIA) |
| メモリソケット |
DDR DIMM×2 |
| 拡張スロット |
AGP×1、PCI×5,AMR×1 |
| FSB設定クロック |
95、100、100.7、100.9、103、105、110、115、133MHz(ジャンパ) |
| コア電圧 |
自動 |
| I/O電圧 |
自動 |
| クロックジェネレータ |
9248BF-153(ICS) |
| ハードウェアモニタ |
チップセットに内蔵 |
| BIOS |
AWARD |
(丸尾)
|