![]() |
| |
メーカー製PCにTV録画やDVD作成機能が盛り込まれているのは、もはや珍しいことではなく、PCをHDDレコーダ代わりに使っているという話もよく聞く。録画したファイルをさらにコンパクトに圧縮したり、凝りに凝ったDVDメニューを作るのは家電製品には真似できないないPCならではの利用法だが、こうしたAV仕様のPCを部屋に置いておくのは少なからず抵抗があるという声も根強い。例えば録りたい番組が夜中にあったとすると、寝ている横で突然モニタがまぶしく輝き、録画中の番組の音声が流れ出し、本体の排気ファンが勢いよく回りだす。いくら録画待機中にスタンバイさせていたとしても、これでは安眠には程遠いだろう。 そしてもうひとつ重大な問題は、PCはとにかく占有スペースが大きいということ。本体とモニタ、キーボードだけでもかなりのスペースが必要なのに、さらにスピーカの設置やマウスを動かすための余裕を考えなければならない。私室にPCを同居させるなら、これらの問題を少しでもクリアしておきたいと思うはず。日本電気(株)(NEC)の2004年夏モデルとして登場した「VALUESTAR S」(NEC Directでは「VALUESTAR G タイプS」)は、液晶一体型のボディにAV仕様マシンに求められる要素をすべて詰め込んだ意欲作だ。 VALUESTAR G タイプSは、17インチワイド液晶モニタ(1280×768ドット表示)、15インチ液晶モニタ(1024×768ドット表示)にそれぞれPentium M-1.50GHzとCeleron M-1.20GHzを搭載する、液晶モニタのサイズとCPUの組み合わせによる合計4タイプのベースモデルが用意されている。17インチワイド液晶モニタモデルはNEC製品ではすっかりおなじみになった“SoundVu(サウンドビュー)”採用機で、15インチ液晶モニタは液晶パネルの左右にステレオスピーカを内蔵している。 SoundVuは、クリアパネルにエキサイタ(スピーカユニットからコーンを取り除いた基部)を直接貼り付け、パネル全体を振動板に見立てて音を鳴らす方式で、指向性を抑えてリスニングポジションを選ばない自然な音場を作り出せる。この振動するクリアパネルを、液晶の前面にクッション材を使って据え付けることで、まるで画面の中から音が飛び出してくるような雰囲気を味わえるのだ。映画などでは、出演者の口の動きと再生される音のタイミングがピタリ一致することを“リップシンク”と呼ぶが、SoundVuならこのタイミングも見事に合う。 液晶モニタ一体型の本機はそれだけでも省スペース設計だが、もうひとつユニークな試みがされている。本体の下部には光学ドライブとフロントアクセス用の各種インターフェイスが用意されていて、さらにその下には手を入れようとしても(一般的な男性なら)指の付け根以上は入らないような、ほんの少しの“隙間”がある。この隙間は付属の無線キーボードを収納するためのスペースで、もともと408×170mmとコンパクトな付属キーボードが、完全にすっぽりと隠れてしまう。 とはいえ、キーボードがモニタの下に収まるだけのPCならこれまでにも存在した。VALUESTAR Sがユニークなのは、この隙間の奥にプッシュスイッチを設けて、キーボードを収納すると自動的に休止状態に移行する“仕掛け”を備えていることだ。格納状態でキーボードを押し込むとスイッチが解除されて数センチほどキーボードが飛び出し、同時にWindowsは休止状態から復帰する。このため、PCを使うときはキーボードを引っ張り出し、使い終えたらキーボードをしまうという習慣が自然に出来上がる。未使用時の場所をとらず、キーボードにホコリがたまることもなく、片づけが苦手な人にも安心だ。 専用ユーティリティソフト“キーボードシンクロナイザー”を使えばこの挙動はカスタマイズ可能で、格納時は“休止状態にする”“電源を切る”“何もしない”などのほか、EXEファイルを指定して特定のアプリケーションを起動させることもできる。ちなみに、休止状態(ACPI S4)ではなくスタンバイ(ACPI S3)に移行させることはできない。
見たいとき聞きたいときに
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
TV録画再生ソフト「SmartVison」。インターネット経由で取得する番組表「ADAMS EPG+」や指定したキーワードやジャンルなどの条件に沿った番組を自動録画する「おまかせ録画」などの機能が盛り込まれている。 | |||
また、電源オフや休止状態に移行した後でリモコンの“地上A”“DVD”“Audio”ボタンを押すと、Windowsの起動(再起動)なしにTVやDVDの視聴、または音楽再生機能が立ち上がる(スタンバイ状態からはWindowsが復帰する)。これらは“インスタント機能”と呼ばれ、一部のメーカー製PCやベアボーンキットなどで流行している仕掛けだ。Windows未起動の状態でTV視聴やDVD/音楽CD再生がすぐに行えるので、Windowsの起動を待たず家庭用AV機器感覚で利用できる。インスタント機能使用時もリモコンが利くので、操作性も家電機器と変わらない。
電源オフからインスタントTV視聴が可能になるまでの時間はおよそ15秒。さすがにTVそのものにはかなわないものの、Windowsの起動を待つよりはるかに高速だ。TVとDVDは色合い/コントラスト/輝度/彩度をマニュアル調整できるので、好みの画質にカスタマイズしてもいい。また、10/30/60/120分のオートオフタイマが搭載されているため、うっかり寝てしまっても自動的に節電できる。
本機でのTV視聴はインスタント機能だけでなく、当然Windows上でも表示・録画・再生が行える。ハードウェアMPEG-2エンコーダの採用で録画時のCPU負荷は低めになり(20%前後)、粒状感やザラつきを抑える「デジタルノイズリダクション」と、映像の揺れやゆがみを低減する「タイムベースコレクタ」を搭載している。ゴーストリデューサや3次元Y/C分離回路などの高画質化回路を持たないため、画質面では同社のVALUESTAR上位モデルに及ばないものの、電波状況が良好なら実使用上の大差は感じないだろう。
ところで、この記事の冒頭で“深夜の予約録画では、騒音や画面点灯のまぶしさが安眠の妨げになる”と挙げたが、うれしいことにVALUESTAR G タイプSにはその対策が施されている。液晶パネル下部には3つのボタンがあり、電源オンやHDDアクセスで点灯するLEDを消灯するための“DIMMER”と、液晶画面の暗転と消音を行う“NIGHT MODE”を押しておけば、夜中の録画予約実行時に起こされることはない。また、画面全体の輝度を高める“VISUAL”を使うと、TVやDVD視聴時に最適な明るさにワンタッチで切り替えられる。
本体下部は右にDVDマルチプラスドライブ(NECでは“DVDスーパーマルチドライブ”と呼称)、左側にPCカードスロット/メモリカードスロット/IEEE1394/USB 2.0が並ぶ。フロントアクセス用のコネクタはフリップカバーで普段は隠されている。 |
キーボードを格納する仕組みにばかり気をとられがちだが、このほかにもボディデザインには細やかな気配りが感じられる。例えばデスクトップPCではケーブルの引き回しに苦労することが多いが、すべての外部/拡張コネクタを本体左側面に配置することで(電源ケーブルのみ右側面)、設置初期の結線を容易にするだけでなくPC使用中のケーブルの抜き差しを手軽に、接続したケーブルもまとめやすくしている。後ろに向かって飛び出すケーブルがないので、本体背面を壁際まで寄せられるのも魅力だ。また、本体下部右側からローディングするDVDマルチプラスドライブ(NECでは“DVDスーパーマルチドライブ”と呼称)のベゼルと同色のカバーが左側に配置され、フロントアクセス用のUSB 2.0/IEEE1394/PCカードスロット/メモリカードスロットを隠している。メモリカードスロットはメモリースティックとSDカード、xDピクチャーカードをサポートする。
驚くほどすっきりとまとめられた背面。上下3箇所のスイッチをスライドさせると、写真の白いパネルが丸ごと外れて内部にアクセスできる。内部を見るまで気づかないかもしれないが、実は背面パネルがかなりの静音効果を持っている。 | |||
ところでNECは、今年2月1日より直販サイト“NEC Direct”を立ち上げているが、ここでは全国の店頭に並ぶVALUESTARやLaVieのパーツ構成をユーザーが一部カスタマイズして購入することができる。それぞれ「VALUESTAR Gシリーズ」「LaVie Gシリーズ」と呼ばれ、今回評価した本機は「VALUESTAR GタイプS」としてラインナップされている。
店頭モデル(VALUESTAR Sの2モデル)は液晶モニタサイズの違い以外はまったく同じ構成だが、直販モデルならCPUの種別やメモリ、HDDの容量を選択できる。今回借用したのは店頭の17インチワイド液晶モニタモデルと同タイプ(PC-VG12MECEH)のため、CPUにはCeleron M-1.2GHzを搭載していたが、アプリケーションの切り替えで待たされることがあり、ややストレスを感じた。特にマルチメディア統合環境「MediaGarage」の起動時や「プログラムの追加と削除」など、高いCPU負荷がかかる場合に“待たされる場面”が顕著に現れる。2万3000円ほど高くなるが、ここはぜひPentium M-1.50GHzモデルをお勧めしたい。店頭モデルではCPUを選択できず直販サイトでしか買えないが、この差は実に大きい。
右側面は電源コネクタのみで、主なコネクタ類はすべて本体左側面に集まっている。このため、本体背面を壁や机のぎりぎりまで寄せることが可能だ。 | |||
グラフィックス機能はチップセット内蔵のATI MOBILITY RADEON 9000 IGPで、Windows XPの視覚効果(Lunaインターフェイス)やTV/DVD視聴、オフィスアプリなどの表示には十分だ。また、液晶モニタ一体型モデルながら、3Dグラフィックス表示についても(株)スクウェア・エニックスのMMORPG(多人数参加型オンラインRPG)「FINAL FANTASY XI」のオフィシャルベンチマーク2が完全動作し、スコアはLowモードで1634ポイント(2回平均)となった。同社によると1500〜1999のスコアは『デフォルト状態でストレスなく動作させることができる』としている。グラフィックス機能は変更できないが、CPUを前述のようにPentium M-1.50GHzにすることでベンチマークテストのスコアも大きく伸びるはずだ。
また、チップセット内蔵のグラフィックス機能により、画面表示用メモリ(グラフィックスメモリ)をシステムと共用するので(32/64/128MBをBIOS設定で切り替え)、標準の256MBでは容量不足になりがちだ。少なくとも512MBに増設しておきたい。HDDは80/160/200/250GBで選択肢が4つ用意されているが、GB単価では160GBと200GBが1GBあたり約98〜105円でひときわ割安だ。2台目のHDDを内蔵するスペースはないので、本機をHDDレコーダのように使って、なるべく長時間録画を望むなら200GB以上がお勧めだ。
| ||||||||||||||||||||||||||||||
(松本 俊哉)
|