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開発者に聞くThinkPad X41 Tabletの秘密 【INTERVIEW】レノボ・ジャパン初のThinkPadそれは“タブレット”だった!
開発者に聞くThinkPad X41 Tabletの秘密
レノボ・ジャパン
26万1450円(ダイレクト価格)
http://www.lenovo.com/jp/ja/

2005年7月26日

ThinkPad X41 Tablet
ThinkPad X41 Tablet

 レノボ・ジャパン(株)は6日、かねてから製品化をアナウンスしていた新製品『ThinkPad X41 Tablet』(型番:1866-5GJ)の販売を開始した。これは、レノボ・ジャパンの発足後、初めて国内市場に投入される“ThinkPad”であり、OSにマイクロソフト(株)の『Windows XP Tablet PC Edition 2005』を搭載した最初の“ThinkPad”でもある。

 ThinkPad X41 Tabletの特徴は、堅牢性や信頼性といった既存のThinkPadの魅力を何ひとつ損なわず、“タブレットの利便性を追加したノートマシン”という1点に絞り込めるだろう。実際、ノートパソコンとして使用していると、ThinkPad X41やThinkPad X31と変わらない操作性を持っており、普通に使っているとタブレットPCとは気づかれないかもしれない。

 軽量なボディーも魅力のひとつだ。ほぼフラットな本体の薄さは29〜32mm。重量は標準の8セルバッテリーを搭載した状態で1.88kg。ThinkPad X41と同じ4セルバッテリーを使用した場合は1.66kgとなる(X41は1.49kg)。ThinkPad X41 Tabletと同じ“コンバーチブル”タイプのタブレットPCでは、液晶パネルの回転機構に複雑な仕組みが必要になるため、2kgを超す製品も珍しくない。



ThinkPadの総本山“大和事業所”に集結した開発陣
ThinkPadの総本山“大和事業所”に集結した開発陣

 日本アイ・ビー・エム(株)から移籍した、レノボ・ジャパンの開発者は同製品を「新機軸」と呼ぶ。製品のコンセプトは2年以上をかけて練られ、何十種類もの“活用ストーリー”を考え、その中で必要な機能や設計要件を細かに検討していったという。開発はベースモデルのThinkPad X41と並行して行なわれた。ThinkPad X41 Tabletはいかにして生まれたのか? その誕生にはどのようなチャレンジがあったのか? 開発者へのインタビューを通じて明らかになった同製品の秘密をお届けする。



前沢氏(1)
レノボ・ジャパン製品開発研究所、企画・開発推進テクニカル・プロジェクト・マネージャー前沢安則氏

 今回の取材を通して最も驚かされたことは、ベースモデルとなったThinkPad X41が実は最初からタブレット化を想定して開発されていたことである。タブレットを搭載したThinkPadのプロジェクトはずっと以前から水面下で進められており、これがThinkPad X41と合流する形で世に出たのである。それでは、レノボは、なぜこの時期にタブレットPCを投入しようと考えたのだろうか?

[前沢] タブレットPCをリリースした理由のひとつには、Windows XP Tablet PC Editionのエンハンス版(Windows XP Tablet PC Edition 2005)が最近リリースされ、完成度が高くなった点が挙げられます。Microsoft Officeなど、タブレットの利点を生かせるように作られたアプリケーションもあり、メールに手書きの文書を添付するなど、テキストと手書き文字の混在がやりやすくなってきました。また、海外を含めた全世界の市場では、今年大きな転換があって、来年以降倍々で増えていくという調査会社の予測もあります。市場的な部分とOSの進化の両面で環境が整ったと言えます。



前田氏
レノボジャパンの品質開発・製品保証 機構設計 次長の前田一彦氏

[編集部] 製品の開発はいつから行なわれたのでしょうか? 

[前田] コンセプト決めの段階を含めるとかなり長い期間になります。「タブレットを突破口として何か新しいことができないか」と、ディスカッションを始めたのが2003年ごろで、社内から興味のある技術者が10〜20人ほど集まってブレスト(アイデアを出し合う初期段階の会議)を始めました。ディスカッションを進めるなかで単純なタブレットだけではなく、他社がリリースしているようなハイブリッドタイプ(キーボードと本体の着脱が可能な製品)を始めとしたさまざまなアイデアが出ました。具体的な製品化の話が出たのは、2004年の初めです。ThinkPad X41をベースにして、どういう製品が作れるかどうかの検討が始まりました。



木村氏
レノボ・ジャパンの製品企画の木村香織氏

[編集部] ThinkPad X41にタブレットを載せる際に、基板設計など内部の変更もあったのでしょうか?

[前田] 実はThinkPad X41の基板は“タブレットReady(レディー)”で開発したものです。X41では使用していないコネクターもあります。メカニカルの部分でも、マグネシウム合金を圧縮成型したX41のボディーを液晶パネルの付近までうまく伸ばして、センターヒンジを固定できるようにしました。その意味では一番効率のいいX41の発展型と言えます。

[木村] ThinkPad X41というモデルの開発が終了したあとにタブレットをつけたのではなく、タブレットPCを開発する専用のタスクチームが別に走っていて、その議論の成果がX41に凝縮されたのです。この点は、製品企画から見ても驚かされた部分です。



ヒンジへのこだわりなしに、この製品は語れない


センターヒンジ
ThinkPad X41 Tabletに採用された“センターヒンジ”。液晶パネルはノートパソコン状態から時計回りに180度回転する

 コンパクトにまとまったThinkPad X41 Tabletの本体は、薄型ながらしっかりとした強度があり、“堅牢性”や“耐久性”に対する配慮も感じられる。特に注目したいのが液晶と本体をつなぐヒンジである。ThinkPadクオリティーに見合ったヒンジの耐久性を実現する上で、どのようなチャレンジがあったのか? その当たりを聞いてみた。

[前田] 開発当初は本体の形状に関して10種類近いアプローチを考えました。ヒンジ機構に関しては“リアヒンジ”“サイドヒンジ”“センターヒンジ”の3種類から検討しました。

 前田氏の説明によると、リアヒンジとはリア(後部)にヒンジを持ち、液晶パネルの下を手前に引くようにスライドさせることで画面を上向きにできる機構で、液晶パネルは回転しない。1994年に登場した『ThinkPad 750P』(日本では未発表のモデル)で採用された方式だ。
 サイドヒンジは、液晶パネルの左右を2本のアームで支え前後に回転させる機構。
 最後のセンターヒンジは液晶パネル下側に左右(水平方向)に回転するヒンジを置く機構であるという。ThinkPad X41 Tabletでは、結局センターヒンジを選択したが、その理由は全体のサイズと重量を抑えられるためだったという。



リアヒンジ
製品開発にあたって3種類のヒンジの採用が検討された。写真はリアヒンジを採用した『ThinkPad 750P』(日本未発表モデル)

[前田] 最終的にはセンターヒンジに落ち着いたわけですが、センターヒンジでも2〜3種類の試作をしています。今回は薄型の専用バッテリーを使い、キーボードのスグ後ろにヒンジを配置する方法を取りましたが、例えばバッテリーをX41と同じものにして、バッテリーの上にヒンジを持ってくる方法なども案としてあったんです。厚くなりすぎるということで、採用しませんでしたが。

 前田氏は、キーボードとバッテリーの限られたスペースにヒンジを置くことには「たいへんな苦労があった」と言う。回転半径の小さいヒンジを選択すると同時に耐久性の確保が必要になるためだ。

[前田] ヒンジのサプライヤー(部品供給会社)は最終的に1社に絞りましたが、開発過程では複数社に声をかけました。中の構造物もすべて調査して、サプライヤーと設計を進めていきました。その一方でどういう規格を満たせたら、品質に自信が持てる製品が作れるかを検討しました。例えば、1万回ヒンジを動かした際でも“がたつき”がコンマ何ミリの範囲内に収まらないといけないなど、厳密なテスト基準を決めていったんです。



落下試験などの品質基準はタブレット用にさらに厳格とした



 品質基準に関しては、ThinkPad X41と同等の基準をクリアーするのはもちろんのこと、タブレット独自の試験を新たに設けたという。

固定用のラッチ
液晶パネル部分と本体を固定するラッチは裏表に出る

[前沢] プッシュテスト(本体を上下からはさむように力を加えた際の耐久性)を始めとした耐久テストは従来のThinkPadのクライテリア(品質管理基準)にのっとっています。また、落下テストの基準に関しては従来より厳しいものにしています。タブレットは手に持った状態で使用するため、一般的なノートより数十cm落下する位置が高いだろうというのが理由です。

[前田] それ以外にも“CSRT”(Customer Simulated Reliability Test)というユーザーの使い方を想定したテスト基準を設けています。例えばLCDを持って持ち上げたり、ヒンジを逆方向に回すなど、乱暴な使い方にも対応できるテストを行なっています。

[編集部] 液晶を反転した際、真ん中のツメ1つで固定しますが、ここの仕組みは面白いですね。これは薄さを実現する上で考えたものでしょうか?

[前田] (よくぞ聞いてくれた、という表情で)このラッチの部分だけでも3回作り直したんです。表裏にラッチが出るという仕組み自体は他社もやっていますが、その中でもしっかりとした使用感を得られるように配慮しました。ここも開発段階ではいろいろなアイデアがあり、より複雑でコストがかかるものも出てきたのですが、最もユーザーの使用感がいいという理由でこの仕組みを採用しました。

[編集部] 液晶パネルのフレームとキーボードのある本体部分が貝殻のようにしっかりと噛み合って強度を確保しているのが、従来のThinkPadの特徴のひとつだったと思います。今回の製品にはそれがないようですが。

[前田] “クラムシェル”の構造は、ねじりへの耐性を考慮して採用してきたものですが、今回は液晶パネルを裏返す必要があるため、フラットな形状としました。これはユーザビリティーのチームから強い要求があった部分です。ペンで書く際に液晶パネルとフレームの段差が少ない点も使用感を高めている理由のひとつだと思います。





土橋氏
レノボ・ジャパン製品開発研究所 先進技術開発 表示技術 担当の土橋守幸氏

 ThinkPad X41 Tabletの技術的な取り組みとして、レノボが強調するもののひとつに液晶パネルがある。屋外での使用頻度が高く、また机の中央において複数人でディスプレーを囲むように見るといった使い方も想定できるタブレットPCでは、反射の少なさや視野角の広さが重要だ。ThinkPad X41 Tabletでは“Super Wide Viewing Angle FFS”という広視野角のパネルを使用し、これまでなかった上下左右170度と広い視野角を実現した(他社製品では115〜135度程度が通常)。同時に表面加工にも気を配り、反射も抑えた。

[土橋] 広い視野角は対面でお客さんと仕事する際に必須になるでしょうね。囲んでタブレットを中央に置く場合、これまでの製品では表示内容の確認が非常に困難でした。Super Wide Viewing Angle FFS液晶を採用した理由のひとつがこれです。

 確かに営業マンが顧客に対してプレゼンを行なう際などには相手にマシンの画面を向け、横からのぞき込むように使うケースが多いし、ミーティングなどでは参加者の中央にマシンを置き、数人で覗き込むように画面を見るといった使い方もする。さらに土橋氏は「広視野角を実現したことにより、“ポートレート”モード(タブレットモードで、液晶パネルを縦向きにした状態)で、左右からの見え方が異なることによる違和感も減らせた」という。



視野角の比較
ThinkPad X41 Tablet(上)と一般的なタブレットPC(下)との液晶パネルに同じ画面を映し、ほぼ同じ角度から撮影してみた。斜めから見ても、ThinkPad X41 Tabletでは、ハッキリと内容を確認することができる。

 野外での使用を想定して、パネル表面の処理にも気を配った。この点は他社が気付いていないThinkPadならではのノウハウが詰め込まれているという。

[土橋] 野外やオフィスで使用する際のコントラストの低下がこれまでのタブレットの課題のひとつでした。タブレットでは液晶の手前に透明な板(プロテクションプレート)を貼りますが、反射はこの透明板の表、裏、そして液晶表面のそれぞれで生じます。他社従来製品では表面を粗くすりガラスのように加工することで反射を抑えているようですが、デメリットが2つあります。ひとつは画面がぼやけてしまうこと。もうひとつ野外では白びかりして見えにくくなる点です。

 これらの問題点を解消するため、ThinkPad X41 Tabletでは、透明板の表面処理を薄いアンチグレア(AG)処理とした。一方、透明板の裏側にはアンチリフレクション(AR)コートを施したという。

[土橋] 表面に強いAG処理を施すと白い部分ではギラツキが目立ち、黒が締まらずコントラストを下げる理由となります。そこで、AG処理を弱くしてその代わりに裏面の反射も抑えることにしました。光の反射はガラス表面だけで起こると思われがちですが、実際は表面だけでなく裏面でも反射するんです。裏面にはARコートを付けました。ARコートはカメラのレンズなどにも使われているデリケートなコーティングですが、手アカなどがつくと非常にぎらぎらしてしまいます。傷が付いてもダメです。つまり手の触れる表面には使えない。ここが他社製品との大きな違いだと思います。



プロテクションプレート
ThinkPad X41 Tabletのプロテクションプレートの断面図。表面だけでなく裏側にも反射を抑えるコーティングを施すことで、白うきと反射の低減という2つの問題をクリアーしている

[編集部] Super Wide Viewing Angle FFSのパネルは他社も採用してくる可能性はありますか?

[土橋] パネル自体は、他社のノートパソコンでも使われ始めていますが、私たちはプロテクションプレートとの組み合わせにアドバンテージを持っていると思います。

[編集部] 液晶は透過型ですが、別の方式を利用する選択肢はなかったのでしょうか?

[土橋] 屋外での使用を考えると反射型という選択肢もありますが、完全な外でないと有利ではないし、色再現性も低くなります。室内の環境光は、明るいところで500ルクス程度ですが、500ルクス以下で比べたら、バッテリーライフや画質など、どれをとっても透過型が有利です。

[編集部] 色の再現性や好ましい色というのは地域によって違いが出てくると思うのですが、そのあたりはどのように考えて設計されていますか?

[前沢] 基本的に全部を満たそうという形で取り組んでいます。そういう意味では色の表現は最も厳しい要求ですね。今回もわれわれの環境ではARが必要ないのではないか、という意見もありました。しかし全世界の市場を見ると、日本人の目とアメリカ人の目は違うんですね。

[土橋] 補足すると、日本人とアメリカ人の目では白に対する認識が違います。白やRGB各色の基準に関してはワールドワイドで統一したスペックを作っています。日本のクレーム、USのクレームを包含して、すべてを満足できる値を選んでいます。色再現性は他社に比べて少し広く、ここも差別化のポイントになると思います。日本人は蛍光灯文化だから、青に対して慣れている。一方欧米は間接照明が多く、クリーム色に近い白を好む傾向がある。その一方で反射には厳しい。

[編集部] 次のThinkPadではタブレットPC以外の製品でもこのパネルが載ってくると考えていいのでしょうか?

[土橋] デジタイザー部分を取り除いても、価格的にちょっと高いので、コスト次第でしょうね。





 ThinkPad X41 Tabletをタブレットモードで使用する際の持ち方として、レノボではバッテリーが右側にくるように構え、左腕で抱え込むように持つことを考えているという。前沢氏によると、これは“ヒューマンファクター”の観点から選択したものだという。IBM時代からThinkPadに言える特徴のひとつは“ユーザビリティー”である。タブレットならではのユーザビリティーに関して、レノボはどう考えているのだろうか?

森氏
レノボ・ジャパンTVT開発 第一TVT開発 主任 開発技術担当部員の森 英俊氏

[編集部] タブレットPCならではの操作性という部分で、考えられた部分はありますか?

[森] タブレットモードに入ると、キーボードが操作できなくなります。基本的にはペンオペレーションを想定していますが、ペンだけではすべてを網羅できません。例えば、ThinkPadでは、Fnキーとの組み合わせで画面輝度の調整などの機能を呼び出せるようになっています。単に文字を入力するだけのデバイスではないわけです。

 ThinkPad X41 Tabletでは、液晶フレームに“タブレットショートカットメニューボタン”を置き、液晶輝度やボリュームの上げ下げなどの設定を簡単に変更できるようにした。Fnキーとのコンビネーションで実現されていた機能の多くがここに集約されている。

[森] 操作系を考える上で、何もかも機能を盛り込むという方向ではやりませんでした。いろんな選択肢があることもいいことだと思いますが、本当に必要なものは何かというのを長い時間かけて検討し、吟味を重ねて、これだけはという“必要最小限のセット”を見つけました。そのために最も時間をかけたのは、こんなふうにユーザーが使うだろうというシナリオ作りです。モノを作り始める前段階で“こういうシナリオ”があるから“こういう機能”が必要。その中でも重要なのは“この機能”──という感じで、プライオリティー付けを行ないました。



ハードボタン
ソフトのメニューにするか専用のハードボタンを設けるかの切り分けが苦心したポイントだという

 特に苦心したのは、ソフトのメニューで提供する機能と専用のハードボタンを設けなければならない機能の切り分けだったという。

[森] パネルの横に設置できるキーの数は限られてきます。どのぐらいまで載せるのかという選択がひとつ。逆に、最低限ないといけない機能もあります。ほとんどはユーティリティーのメニューで大丈夫ですが、これはハードじゃないとダメというものを検討してボタンを割り当てていきました。そのひとつがローテーションボタンです。これはメニューでも持てる機能ですが、あえてボタンで提供することにしました。この機能をメニューで提供した場合の問題点は、1度回転させてしまうとメニューの向きが変わってしまう点です。ハードボタンなら行き過ぎたら数回押して元に戻すことができる。つまり画面の回転は単体のボタンとして必要だったわけです。



タブレットかノートかをシステムが判断し、最適な動作を選ぶ

 従来のThinkPadは、液晶パネルが閉じられた状態にあるかどうかの判別に物理的なボタンが用いられていた。しかし、ThinkPad X41 Tabletでは、物理的なボタンではなく、磁気センサーを利用して液晶パネルの開閉状態を検出しているという。磁気センサーは携帯電話などでも広く用いられているが、今回はタブレット部分に突起を付けられないという理由で採用した。

[編集部] ThinkPadの特徴のひとつにTrackPointがありますが、液晶パネルを裏返した際に天面と干渉し、誤動作の原因にならないかどうかが気になります。またTrackPointがボディーを傷つけることはないのでしょうか?

[森] ThinkPad X41 Tabletでは、パネルのステータスをソフト的に認識し、タブレットモードにした際にはTrackPointの動作を一時的に止めるようにしています。もちろんTrackPointが液晶パネルの表面や、裏返したときにも天板に当たらないようなマージンも確保しています。

[木村] 実は、タブレットとして使う場合とノートパソコンとして使う場合では手の触れる場所が変わるため、冷却方法も変えています。ノートパソコンとして使う場合は底面から熱を逃がしていますが、タブレットとして使っている場合には背面に触れるため、熱くならないようにするといった感じです。

[森] ユーザーがノートパソコンとして使用しているのか、タブレットとして使用するのかをシステムが判断して、最適な冷却をするようにしています。熱の逃がし方の基準もタブレットとノートで異なるんです。また、タブレットにすることで、液晶パネルのほうにもいくつかの指紋認証用のリーダを始めとしたいくつかのファンクションを乗せる必要がありました。基板を含めた機能を限られたスペースに収めるかには苦労しました。



河野氏
日本アイ・ビー・エム(株)APTOソリューション開発第二ソリューション開発ソリューションエンジニアリングの河野竹敏氏

[編集部] タブレットに弱点があるとすれば、それは作業結果を目で確認しなければならない部分だと思います。入力方法という点では、タッチパネルを装備して、画面上にバーチャルなキーボードを出して、叩けてしまうというのも面白いと思うのですが。

[前沢] それは面白いアイデアですね。検討する価値はあると思います。

[河野] ただ、タブレットPCでは電磁誘導式のタブレットを使用しているので、その点の問題がありますね。この方式は、感圧式のタッチパネルとは違って専用のペンが必要になりますが、そのぶん精度が高くなります。一方、感圧式のタッチパネルは接触する部分が増えるので信頼性も低くなります。

[編集部] タブレットの利点として、対面しながら使うというものがありました。現状では1人のユーザーが1台のマシンを使うのが前提ですが、大きな紙に数人がペンで書き込んでいくように、複数のユーザーで1台のマシンを共有して、コラボレートしていくといった可能性もあるのではないでしょうか?

[河野] 編集システムなどの要求はありますが、現状ではペン1本1本にIDを持たせるような仕組みにはなっていません。色を分けて書き込むといった使い方も面白いのですが、今の仕組みでは難しい面があります。

[編集部] 複数のマシンをバーチャルでつなげたり、ホワイトボードのような機能を活用するといった手段もあると思います。そのあたりもぜひ検討いただければと思います。



ベストバランスを考えると12インチノートに落ち着く



出井氏
日本アイ・ビー・エムAPTOソリューション開発第二ソリューション開発ソリューションエンジニアリング担当の出井誠一氏

[編集部] 今回、フォームファクターにはThinkPad X41を採用されましたが、Tシリーズのようなより大画面・高解像度のノート、あるいは他社になりますがVAIO Uなどミニノートの範疇に入る製品を投入する方向性はなかったのでしょうか?

[前沢] 有り無しに関してはコメントできませんが、コンバーチブルタイプで携帯性と使い勝手のバランスを考え、妥協なしにできるものを目指すと、ThinkPad X41が最上であるという結論になりました。

[編集部] 大型のタブレットは米国でも求められていないという話がありますが、多少かさばってもSXGAクラスの解像度があるメリットはあるのではないかと思います。

[木村] 今回ターゲットにしたのは持ち運べるタブレットです。14インチもアイデアとしてはいいと思いますが、片手で持てなくなってしまうのが難点ですね。

[前沢] 逆に液晶サイズはそのままで、解像度を高くしてしまうと、ポインティングしにくくなるという問題もあります。そうなると、プロテクションプレートをより薄くしたり、技術的にもう少し軽くできるようにならないといけない。現状では14インチのコンバーチブルタイプは難しいと思います。

[前田] ベースにしたThinkPad X41が非常にいい素材だったと思います。そこからなるべく積み上げないでコンバーチブルを作るのが今回の主題でした。部品部品でどこまで軽量化できるか? 堅牢性を持たせられるか? それがわれわれのチャレンジでした。

[森] ThinkPad X41との違いはLCD保護プレートの部分とヒンジによる重量増加ですが、逆に言うとそれだけに収まっています。

[木村] 日本国内で用意したのは1モデルだけですが、オプションでThinkPad X41と同じ4セルのバッテリーも用意しています。こちらを使えば重量は1.66kgとなります。これでも2.6時間の使用が可能なので、持ち運びを重視されるなら選択肢に入れていただければと思います。



これだけで終わる製品ではない

[編集部] 最後にこれからのお話について聞きたいと思います。レノボがIBMのパソコン事業を買収すると発表した際、いままでのIBMではできなかったことができるようになるかもしれないという話がありました。レノボ・ジャパンができたことで、何か新しいこと、例えばThinkPad s30のような斬新さを持ったマシンの登場を期待できそうでしょうか?

[前沢] 期待してもらっていいと思います。今回出したThinkPad X41 Tabletは一発で終わるような製品ではありません。いろいろなことを検討していて、そのどれが日の目を見るのかどうかは分かりませんが。レノボとして新しくやっていこうと考えている部分もあります。開発体制はことThinkPadに限って言えばまったく変わっていません。開発スパンも計画も変わらない。

[木村] 今回の製品はいろいろなところに工夫がされていますから、長く使っていただけると思います。また、長く使っていただくことでそのよさが分かっていただけると思います。特に本体を軽くできたので、いろいろなところに持ち運んで使っていただきたいですね(笑)。

ThinkPad X41 Tabletの主なスペック
製品名 ThinkPad X41 Tablet
CPU 低電圧版Pentium M 758-1.50GHz
メモリ(最大) PC2-4200対応DDR2 SDRAM 512MB(最大1.5GB)
チップセット Intel 915GM Express
液晶/解像度 12.1インチ/1024×768ドット/ペンタブレット
ビデオ GMA900(Intel 915GM Expressチップセット内蔵)
HDD 40GB
光学ドライブ オプション
カードスロット PCカード TypeII×1、SDカードスロット(SDIO 1.0対応)
通信 IEEE 802.11b/g対応無線LAN、10/100/1000BASE-T、ファクスモデム
I/O USB 2.0×2(Powered USB×1含む)、外部ディスプレイ出力端子、ヘッドホン出力、ThinkPad X4用ドッキング・コネクターなど
バッテリ駆動 約6.1時間
サイズ 約274(W)×266(D)×32(最薄部29)(H)mm
重量 約1.88kg(ペン含む)
OS Windows XP Tablet PC Edition 2005

(インタビュー:編集部 佐久間康仁/小林久、月刊アスキー編集部 吉川大郎)




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