2004年11月22日
ソニー(株)が本年5月に“VAIO 第二章”と題して開催した新製品発表会で、驚くべきマシンが参考展示された。7つのテレビチューナーと1TB(テラバイト)のHDDを内蔵し、なんと1週間分のテレビ番組を丸ごと録り貯めるという怪物、それがこの『VAIO type X』だ。参考出品のコンセプトはそのままに、ついに商品化されて販売も始まったtype X。このマシンに秘められた謎、そして内部構造について、開発者へのインタビューを行なった。その驚くべき内部構造について、とくとご覧いただきたい。
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松藤偉織(まつとう いおり):type X全体のリーダー、モバイルエレクトロニクス開発本部 3部 3課 シニア・プログラムマネージャー |
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府中克樹:type X商品企画担当、ITカンパニー 企画部 3課 係長 |
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中村卓也:X3ビデオサーバー設計担当、ITカンパニー 4部 3課 |
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冨田隆広:機構設計担当、モバイルエレクトロニクス開発本部 1部 3課 |
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長谷浩史:X3&DoVAIOソフトウェア担当、モバイルエレクトロニクス開発本部 3部 3課 |
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内田依子:システム全体のソフトウェア担当、モバイルエレクトロニクス開発本部 3部 3課 |
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インタビューに参加いただいた開発者の方々 |
[ASCII24] そもそもtype Xというマシンは、どういう経緯でアイデアが生まれて、製品化されることになったのでしょうか。
[府中] 以前から私どもは“AVに強いパソコン”ということで、VAIOシリーズをやってきました。そして将来のAVパソコンはどうあるべきかを議論しているなかで、やはり避けて通れないのが“ホームAVサーバー”。AVを保存しておける場所であり、AVを配信できる能力、高画質で再生できる能力、そういったものを備えたAVサーバーが必要になるだろう、というのが皆の一致した意見でした。ずいぶん前からこういう話をしていたんです。
そしていよいよ、本気で作ってみた方がいいのではないかということで、type Xを作りました。時期的にハイビジョンが本格的に普及し始める時期でもありますし、DLNAに代表されるホームネットワークの世界もこれから花開くだろうと思っています。そのタイミングに合わせて投入しようという趣旨なのです。
type Xはデスクトップパソコンであると同時にAVサーバーであるという所で、新しいコンセプトで商品を投入しようということになりました。今回は名前も“パーソナルコンピューター”という名ではなく、あえて“AVレコーディングサーバー”という名前にしました。「従来とは違うコンセプトです」ということをアピールしているわけです。
[ASCII24] type Xは“パソコン”なんですか?
[府中] パソコンであることに変わりはないのですが、“パーソナル”かと言えばそうではなかったり、“計算する”という意味でのコンピューティングかと言えば、それも違う気もします。パソコンという言葉では言い表わせない面があったので、新しい呼び名をつけました。
[ASCII24] プロジェクトが具体的に始まったのは、いつ頃なのでしょう。
[府中] 足掛けで言うと2年間ぐらいかかっています。“バイオMX”というマシンがAVサーバーというコンセプトを初めて言い始めて、それの開発が終わった段階から、次世代のAVサーバーを考え始めていました。本格的に設計に取りかかったのは1年前になります。
画質を良くするために昔ながらのアナログチューナーを
[ASCII24] それにしても、トリプルチューナーを2台内蔵というのは、いきなり過激な企画ですね。家電系のHDDレコーダーでもダブルチューナー搭載が増えてきましたし、Windows XP Media Center Editionでもダブルチューナーがサポートされた。とはいえ、3+3+1というのは(笑)。
[松藤] 最初はそこまでなかったのですが、途中から「どうせだったら全部いっちゃえ」と。やはり2〜3チャンネルくらいだと中途半端なだけで、概念が変わるわけでもなく、今までの録画と何も変わらない。それであれば思い切ってやってしまえと。
[ASCII24] パソコン部分と完全に独立したユニットに録画をさせようというアイデアはどこから決まったのでしょうか。今ではパソコンに複数枚のチューナーカードを差して、同時動かすというアイデアも珍しくはありませんが。
[松藤] 結構早いうちから、「分けて別にしよう」という話でした。パソコン上で全部やろうと思えば不可能ではないのでしょうが、それをやると完全な専用機になってしまい、パソコンとしては使えない。HDDの書き込みを続けているだけで、けっこうなCPUパワーを取られてしまったりする。元々パソコンの概念を捨てた専用機ではないので、パソコンとして使えるのも重要と考えていました。「パソコンとして使いながら、録れます見られます」というのを考えた時に、早いうちから「独立しかないね」と。
[ASCII24] パソコンはどうしても、ハングアップしたり再起動することがありますからね。しかしX3ビデオサーバーは、今までのVAIOで搭載していたMPEG-2エンコーダーカードとはかなり違うものですよね。
[中村] そうですね。チューナーカードという意味では、違いを出さないために同じチューナーとエンコーダーチップを使ってはいます。最初はエンコーダーチップも1つだけではなくて、チューナーごとに1つの計3つを使っていたのです。そこにタイミングよくカナダのViXS Systems社のエンコーダーチップが登場して、画質も低ビットレートでキレイに録れるので、変更して今の形になりました。
[ASCII24] エンコーダー以外のゴーストリデューサーなども、デスクトップパソコンの“VAIO type R”と同じ物ですか。
[中村] はい。パソコン側のチューナーカードにも同じチップが搭載されています。
[府中] チューナー周りは従来のtype Rと同じものですね。非常に評判のいいチューナーなので、そのまま使いました。
[ASCII24] 今では非常に小型薄型化されたデジタルチューナーもありますが、type Xのは従来型のアナログチューナーですね。
[府中] 基板を見ていただければ分かりますが、チューナーが大きくて残りの部分の集積度がものすごく高い。チューナーに画質の良い物をとこだわっていくと、どうしてもこのサイズになってしまう。なので残りにしわ寄せがいって、そこだけノートパソコンのような基板の集積度になっています。
[松藤] チューナー部分って、すごくアナログなところなので、その近くにデジタルの部品があると悪影響を及ぼすなんてことがしょっちゅうあるんです。だからできるだけ切り離してしまえと。今のチューナーはすごく小さいものも出ていますが、やはり受信感度や特性的には、まだまだ昔ながらのアナログチューナーにはかなわない。画質を良くするためには、あまり感度の良くないものは使わずに、昔ながらのアナログチューナーを使っています。X3の基板も10層基板なんです。デジタル回路の部分はこれだけしかないので、この中に収めるのはかなり苦労しました。
[ASCII24] この大きなカードをパソコンの中に2枚も入れるというのは、相当な冒険だったと思いますが。
[松藤] 入れる場所には苦労しましたね。
[中村] とはいえ、チューナーカードを6つ入れるよりは(笑)。
| VAIO type X VGX-X90Pの主なスペック |
| 製品名 |
VGX-X90P |
| CPU |
HTテクノロジ対応Pentium 4 560-3.60GHz |
| チップセット |
Intel 915P Express |
| メモリ(最大) |
DDR2 SDRAM(PC4200) 1GB(最大2GB) |
| グラフィックス |
ATI RADEON X600 XT(DDR SDRAM 128MB) |
| HDD |
1TB(パソコン用500GB、X3ビデオサーバー用250GB×2) |
| 光ディスクドライブ |
DVD+R DL(2層式DVD+R)対応DVD±RW(DVD+R DL 2.4倍速/DVD-R 8倍速/DVD-RW 4倍速/DVD+R 8倍速/DVD+RW 4倍速/CD-R 40倍速/CD-RW 24倍速) |
| スロット |
PCI Express x16×1(空き0)、PCI×1(空き0)、メモリースティック×1、CF TypeI/II×1、xDピクチャーカード×1、SDメモリーカード/MMC×1 |
| 通信 |
10/100/1000BASE-T×1、10/100BASE-TX×1 |
| I/O |
USB 2.0×5、IEEE 1394×2、DVI-I出力端子、D4ビデオ出力端子、光角型デジタル出力×2など |
| サイズ(W×D×H、スタンドのぞく) |
465(W)×160(D)×430(H)mm |
| 重量 |
約19.5kg |
| OS |
Windows XP Professional SP2 |
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type X 内部パーツ総覧 その1
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前面側筐体フレーム(内部側から見た状態) |
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前面の鏡面パネル |
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背面側のパネル |
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背面側筐体フレーム |
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(左から)電源ユニット、HDDフレーム、X3ビデオサーバー用ファン付きフレーム |
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(左から)X3ビデオサーバーの表側、裏側、X3用ファンとフレーム |
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(左から)ヒートシンク上のファン、CPU用ヒートシンク |
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(左から)ドライブトレイが出てくる部分の外板、電動ドアや前面LEDへの配線コネクター、(下)DVDスーパーマルチドライブと固定用フレーム |
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SH-4-240MHz、メモリ128MB、OSはITRON
[ASCII24] X3自体が1つのパソコンのようなものですよね。OSは何で動いているのでしょうか。
[中村] ITRONを使っています。
[松藤] ITRONでマルチタスク動作していて、エンコード、HDDに記録、配信のそれぞれ全部でタスクが分かれて動いています。
[ASCII24] 3チャンネル同時にエンコードして、記録して、外部の機器に配信までする。そう考えるとたいした処理能力ですね。CPUは何ですか。
[中村] SH-4です。240MHzで動いています。
[ASCII24] 3チャンネル全部で高ビットレートの録画を行なっても、問題はありませんか?
[中村] ええ、問題なく。
[松藤] ギリギリですかね、3チャンネルを録画して読んで配信まですると。ただし配信にはCPUパワーがいるので、8Mbpsで録画をしながら、8Mbpsで配信ということはできません。
[ASCII24] メモリーはどれくらい載っているのでしょうか。
[中村] 256Mbitのチップを4つ載せています。計128MBですね。
[松藤] HDDって必ずリアルタイムに書けるわけではないので、バッファを持たなくてはならない。それも3チャンネル分ということになるので多く載っています。
[ASCII24] パソコンの内部に独立したHDDレコーダを内蔵するうえでの苦労はどういった点ですか。type X自体、それほど巨大なマシンじゃないですよね。ここまで小さく高密度にしないという選択もあったと思いますが、なぜここまでこだわったのでしょう。
[府中] でもVAIOとしては結構大きいですよ。VAIOのデスクトップでは最も大きいtype Rと言えども、いわゆる自作パソコンのケースと比べれば小さいですから。この筐体でも「大きいね」と社内で言われることもあって、できるだけ小さく作らなきゃと頑張りました。
[松藤] 設計スタッフの中でも「ちょっと大きいな」という声がありました。当然部品を数多く入れていけば大きくなるのは当たり前なのですが、他のシリーズがあれくらいのサイズなのでね。ごく普通に安全方向に設計していくと、こんなサイズには収まらないので、最初はかなり大きくなってしまった。デザイン的にもこんな大きいのは駄目だろうという意見があったので、メカ設計担当がかなり苦労して今のサイズに収めてくれました。
[ASCII24] X3とパソコン側の接続は内部でのネットワーク接続ですが、PCIなどを使わずにネットワーク経由にした理由は。
[中村] もともとネットワーク配信を見据えて作っていたためです。データだけをPCI経由でやり取りするよりは、直接ネットワーク経由でやり取りする方がトータル的に見てもいいという判断です。
[松藤] パソコン側にギガビットイーサネット(GbE)と100Baseを1ポートずつ備えたスイッチングハブを内蔵している形です。パソコンのマザーボードとはPCI Expressを使ってハブを接続しています。マザーボード側の帯域が不足することもありません。
ついに公開! type X驚異のメカニズム
ここで機構設計担当の冨田氏の手により、type Xの解体作業が始まった。まず鏡面パネルが外され、前面側のパネルに手がかかる。
[ASCII24] type Xって、普通のパソコンユーザーがばらせるものですか。
[冨田] 無理でしょう。
[松藤] できないですね。
[府中] このアンフレンドリーさに、「中は開けないでね」というメッセージを(笑)
そして前面パネルが外されて、ついにその内部が明らかになった!
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前面のパネルを外すと、その内部が明らかに! すさまじい密度とケーブルの量に、思わず「うわっ!」(注:すべての写真は開発時のモデルで撮影しており、製品版とは異なる可能性があります) |
[ASCII24] (蓋を開けたマシンを見て思わず)うわ! すげえ!(全員爆笑)
[松藤] 見ていただくと分かりますが、隙間がぜんぜんないんですね。
[ASCII24] これはちょっと、ばらして自分でHDD交換ってわけにはいきませんね(笑)。
[府中] 私どもの製品には、メモリーの増設の仕方を解説しているような“開けてもいい”製品と、“開けないでね”という製品がありまして、type Xは後者にあたります。type Rなんかは、ボタン1つで開くようになっていますが、そういう工夫もしていません。
[ASCII24] このレイアウトになるまでは、相当な紆余曲折があったのでしょうね。
[冨田] レイアウトは20通りくらいを試しました。元々DVDドライブが縦置きであるというのが、デザインの大前提として始まっていて、普通のATXのケースは無視して作り直しました。コネクタの多いマシンなので、できるだけ広い面を表に出して、ケーブルを見せないように後ろへもっていくデザインコンセプトです。ドライブも電動で押すと出てくるというフィーチャーになりました。
[松藤] 今までと違う置き方ということで、床置きであるとか、広い面を前面に見せたいとか。ドライブのトレイが本体からはみ出さないという点も、デザイン側から強く言われて、そうすると大物のデバイスの場所も決まってしまう。配置にはかなり苦労して、設計としては置きたい所にデバイスを置けなかったりしました。
[ASCII24] ここまで高密度に部品をみっちり入れると、「よく空冷で冷えるな」と思います。
[松藤] 量産直前までいろいろと格闘していましたから(笑)。
[府中] まずエアフローの方向が、普通の自作パソコンケースなどとはまったく違います。広い面で吸って、広い面で吐く。
[冨田] 全方向から吸っているようなものですね。台座もスリットになっていまして、下からも吸気できるんです。通常のパソコンなら、前から吸って後ろに吐くとなるのですが、type Xは3方向+下のあらゆるところから吸って、排気は背面に出してしまう。
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DVDスーパーマルチドライブとフレームを外して、ようやくマザーボードやHDDに手を触れられる。重ねて言うが、自分で内蔵HDDを交換しようとは考えない方がいい |
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X3ビデオサーバーのユニットは、このようにチューナーを下にして縦に装着されている。VHF/UHF信号を分配するRFディストリビューターが、スタンド内部にあるためでもある |
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type X 内部パーツ総覧 その2
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(左から)CPU固定用の金具、DVIコネクタの延長コネクタ、電源ボタン・ドア開閉ボタンの内部パーツ、メモリーカードスロット部、(下段左から)RFディストリビューター(分配機)、MPEG-2エンコーダーカード |
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マザーボード。CPUはPentium 4 560(3.60GHz)、チップセットはIntel 915P Express、メモリーは1GBのDDR2 SDRAM。拡張スロットは上から、PCI Express x1(NIC専用)、PCI Express x16(ビデオカード用)、PCIスロット(MPEG-2エンコーダーカード用) |
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電動ドアを動かすモーターと、そのフレーム |
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(上段左から)マザーボードとサウンドボード間のシールド、右側面コネクタ基板、(下段左から)右側面下側ファン、左側面上側ファン |
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(左から)左側面上側パネル、電動ドア用部品、電動ドア |
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サウンドおよびビデオ/オーディオ出入力関係基板。マザーボードの裏にある |
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スタンド部品 |
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(左から)RADEON X600 XTビデオカード、D端子&光オーディオ出力端子基板、PCI Express接続のギガビットネットワークカード兼スイッチングハブ |
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type Xのエアフローのデザインが自作ケースを変える?
[府中] もしかするとtype Xのデザインは、将来の自作ケースのあり方を提案しているのかもしれませんね。広い面は全部吸気口で排気口。これをやると効率が非常によく、ファンの総面積もすごく大きくとれています。
[ASCII24] これだけ中身が入っていてファンも多いわりには、動作音は静かですね。
[松藤] 静音にはかなり気を使ってます。リビングでテレビと並べて置いたときに、うるさいと使う気がしなくなる。パソコンとしてならある程度音が出ていても許容されるかもしれませんが。
[府中] 測定基準がメーカーごとに異なるのですが、他社の基準で言えば30dBを切っていますので、パソコンとしても相当に静かです。
[松藤] X3ビデオサーバーが2台とも録画中にパソコン側を動かしても、type Rとほぼ同等ですね。
[ASCII24] 静音化についてはどのような工夫が。
[冨田] できるだけ大きなファンをゆっくり回して、静音性を実現しています。電源ファンも通常は1つなのを2つに増やしたり、CPUもできるだけ大きなファンを使うために、通常ならCPUの真上にファンを乗せているところを、ヒートパイプでマザーボードの上側に持っていって面積を稼いでいます。
[ASCII24] ちなみに冨田さんはtype X以外に、どのような筐体の設計を手がけられていたのでしょうか。
[冨田] 元はノートパソコンの設計担当で、V505とかB5サイズノートですね。
[ASCII24] でもこれはかなり毛色の違うマシンですよね。
[冨田] 全然違いますね(笑)。
[府中] でも私が初めてメカのレイアウトを見せてもらった時には、「さすがノートを手がけていた人の考えた物だな」と思いましたね。デスクトップとは違う密度の高さが、type Xにはあります。
[ASCII24] というと?
[府中] デスクトップですと、従来のATXのルールに則ってどうにかしようと考えますが、これはまったく(ATXのルールを)無視していますよね。1番排熱にいい形はなんだろうと、追求した形がこれ。このヒートシンクや排熱の向きの工夫というのは、自作ケースでもやったらいいと思いますね。非常に効率が高い。CPUファンと筐体ファンを1つで兼ねていて効率がいい。
“6年使えるパソコン”を実現するためのハイスペック
[ASCII24] 光ドライブなどは、ノート用の薄型ドライブをサイドオープンで使うという手もありませんでしたか。2層式DVD+R対応のものが、まだなかったからかもしれませんが。
[松藤] スペック的にハイエンドのパソコンを狙おうとすると、ノート用のパーツでは1〜2世代遅くなってしまうので、そこは譲らずにハイスペックを使えるようにしました。
[ASCII24] パソコン側をここまでハイスペックにしたのはなぜでしょう。もう少しパソコン側のスペックを低くして、価格を抑えるという手段もあったと思いますが。
[府中] もちろん安いCPUを使って安く作るということもできました。しかしこの商品は、できるだけ長いライフサイクルにしたいという意図があります。ユーザーが半年後にはニューモデルに買い換えるという性格の商品ではない。ですので予算的には高めですが、その分高いCPUを入れておいて、長く使っていただけるものにしたかったのです。現時点で下のクラスのCPUにしてしまうと、来年には心もとなくなってしまうかもしれませんから。
[ASCII24] 確かに今はCPUクロックが上がりにくくなっていますから、現時点で最高の物を選択しておけば、長い期間ハイスペックでいられるという考え方はできますね。家電としてみれば5年くらいは使いたいですし、5年後まで使えれば、その頃にはデジタル放送中心にシフトしていて、アナログ録画機器はお役ご免まで使える可能性がある。
[府中] ソニーの部品の保有年数は6年なので、最低でも6年程度は使っていただけるようにしなくてはと考えています。
[ASCII24] X3から外部にネットワーク配信している場合をのぞけば、X3側で録画した番組はパソコンを起動しないと見られませんよね。家電のようにテレビとつないで、X3単独で見られるようにもしようという考えはなかったのでしょうか。
[府中] マーケティング面からの話とも言えますが、この製品がスペックに対してお買い得なのは、再生機能をパソコンに委ねているからなのです。単独での再生機能までつけると、6台のHDDレコーダ+パソコン1台とコスト的に変わらなくなってしまいます。再生機能をパソコンと共有することで、お得になっている面があるわけです。
[松藤] あとはユーザーインターフェースの統一感とかですね。表示を別に作ると、グラフィックの制約などでテレビへの直接表示ではチープなユーザーインターフェースになるということもありえます。パソコンでやればそういうことはおきないので、内蔵のチューナーと同じ見せ方ができる。
[ASCII24] 確かに、他社の製品でWindowsを起動しなくても視聴や録画ができる製品がありますが、Windows上と比べて機能や性能、操作性に不満を感じるものもあります。そういった中途半端さは、type Xには感じないですね。
自然な発想で生まれたテレビ欄風のUI
[ASCII24] あの新聞のテレビ欄のような“タイムマシンビュー”の発想はどこから生まれたのでしょうか。どこの何が録れているのか、一読できて分かりやすくおもしろい。
[府中] 自然に出てきたというか……、最初からあのつもりでしたね。何でなんだろう(笑)。
[松藤] たくさん録ると、どうやって検索するかがポイントになってくる。分かりやすい見せ方ってなんだろうと考えた時に、自然に見慣れた形が分かりやすい。
[長谷] 7チャンネルを録るのであれば、それをそのまま見せようというのが発想ですね。誰が言ったということもなく、自然の流れで。
[ASCII24] 1番見慣れているインターフェースを実現しよう、ということですね。確かにあれなら分かりやすい。リモコンだけでも操作できますよね。
[長谷] すべてできます。あれだけ複雑なハードウェアですから、それをいかに簡単にユーザーに伝えるかという点に、1番プライオリティーをおいています。
[ASCII24] 通常のPCI接続のチューナーカードとは、異なる経路を通ってのアクセスになるわけですよね。それゆえの難しさというのはありましたか。
[長谷] 特徴のひとつであるネットワーク経由での配信を、見た目には一体化して見せるという点になかなか難しいところもありました。あとは……難しいところを数え上げたらキリがないな(笑)。
X3ビデオサーバーで録った映像は、基本的に自動削除されていきます。その概念が今までとまったく違う。また府中さんからの強い要望もあったのですが、録り貯めたコンテンツを本体側にコピーするという仕様を決めるのも、結構大変でしたね。
[内田] 1枚に3チャンネルのチューナーがあって、さらにX3ごとに別々のHDDに貯めるので、それを一本化して見せるためにはどうしたらいいかとか、チャンネルはどう割り当てるルールにするのかとか。個別のハードウェアが2つあるのに6チャンネルを(見た目上)一緒に扱うので、その仕様についてはかなり議論しました。
[松藤] 今までにない概念で物を考えていくので、本当に手探り状態でした。録画したものが勝手に消えていくというのも、ユーザーが期待したものと違うと、すごく使いにくくなってしまう。できるだけ使いやすく分かりやすい、自然に受け入れてもらえるようにするのは、どうしたらいいのか散々考えて、議論しながら決めました。
[ASCII24] やはり録画したものが勝手に消えるのはまずいんじゃないか、という話はありましたか。
[内田] すごくありましたよ。パソコン側の録画データは自動削除じゃないですから。
[長谷] パソコン側と違うという点については、散々議論がありましたね。
[ASCII24] HDDの容量に制約されるとはいえ、何日くらい録り貯められればいいか、という落とし所はどこでしたか。
[長谷] キーワードは1週間でした
[松藤] 1週間以上は欲しいと、誰もが思うところかなと。1週間前の番組を見れなかったとき続けてみたいと考えると、やはり1週間は欲しい。
[長谷] type Xで1番大きなのは、“予約をなくす”という概念を持ち込んだ点だと思います。またX3の設定に関しても、ウィザード形式でリモコンから設定できるんです。それも苦労しました。ネットワークを介して設定を送るので、ちゃんと機構を考えないと難しいところでした。そして録り貯めたことによって、とにかくコンテンツが膨大な数になってしまうので、番組表形式で見せるタイムマシンビューやキーワードによる番組検索機能は力を入れた部分です。
500GBでもHDDは足らない!
[ASCII24] 家電のHDDレコーダーだと、300GBくらいHDD容量があるとなかなか減らないものですが、このマシンでは足らないですね。
[松藤] X3側だけでトータル500GBもHDDを使っているのに、なお足りないと思わせるものはそうないですね。type Xでは3チャンネルを録画していると、1週間で埋まってしまうので「足りないよ」という感じですね。
[ASCII24] 将来もっとHDD容量が増えて、まるごと1週間分を高画質で録れるようになったらすごいですよね。
[松藤] むしろ理想は低ビットレートでもきれいに録れる、なのです。低ビットレート時の画質に関しては、製品版では現在テストしていただいているものより良くなっているはずです。
[ASCII24] 私どものテスト環境はオフィスビル内の配線を通っていますので、回線側の問題で画質がよくないというケースもあります。
[松藤] そういう環境はtype Xでもつらいですね。ソニー社内も似たようなものですが、そういう環境で低ビットレート録画ではやはり汚い絵になってしまい、「こんなもの?」と言われてしまうこともありました。このエンコーダーはMPEGのブロックノイズが非常に出にくいチップで、素性は非常にいいものなんです。だからきれいな、それなりの入力ソースで録画していると、低ビットレートでもかなり画質は良くなっているんですが。
[府中] MPEGなので、可能な限り前段階で信号をきれいにしておくのがお勧めですね。ゴーストリデューサーはついていますが、取り切れないゴーストがあるとエンコードに二重にパワーを要しますので、ビットレート的にものすごく不利になるんです。なるべくアナログの部分できれいにしておくのが、低ビットレートでの高画質化の秘訣ですね。
[ASCII24] あの分解の難しさを考えると、容量に不安のある方は、Sony StyleでX3側のHDDを400GB×2に増量しておくほうがいいでしょうね。ところでtype Xは、D端子接続したテレビをセカンダリモニターやDo VAIOの表示に使うことを重視しているなど、ちょっと変わった機能もありますね。
[松藤] リビングに置いて使うということを考えた時に、D端子でつなぎたいというリクエストもありました。いくつかの方法とコスト面を検討したときも、ビデオカードの出力をD端子に出すのが一番いいだろうと考えました。ソフトウェア面から見ると、単なるマルチディスプレーの1つのデスクトップなので、非常にアプリケーションからは扱いやすい。VAIO type Vのように専用回路を使うことで、D端子に出力する方法もありますが、それでは特定アプリケーション専用になってしまう。そこでtype Xではアプローチを変えて、パソコン的な扱い方をできるように考えたわけです。
[長谷] これは結構大きな話でして、実はアプリケーション的には相当大変な工夫をしています。
[ASCII24] D端子出力で大画面テレビをディスプレーとして使えるのが普通になると、テレビパソコンの使い方もまた変わってくるのでしょうね。
[松藤] 以前からD端子を備えるものはありましたが、実際にテレビのクオリティでちゃんと使えるものはなかった。ビデオカードのおまけ機能レベルという感じで、家電のレベルではない。そういう点でもtype Xでは苦労しました。
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撮影終了後、完全に分解されたtype Xを組み立て直すスタッフ。「これはココ?」「いやそこじゃない」という具合で、スタッフでさえ完全に組み直せるのは、ほんの数人という話 |
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