2006年6月29日
米マイクロソフト社は2006年末の出荷開始を予定している次期オフィス製品“the 2007 Microsoft Office system”(Office 2007)の日本語版ベータ2を一般にも公開している(関連ニュース記事)。10年ぶりとなるWordやExcelのUI変更、サーバーソフトの大幅な拡張など、Office 2007の特徴について、短期集中連載にてレポートする。
Office 2007は企業におけるシステムを目指す
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Office 2007では10 年ぶりにデスクトップアプリケーションのUIが変更されるなど、さまざまな改良が加えられた。画面は「Excel 2007」 |
Office 2007の要点は、表計算やワープロなどのクライアントソフト(デスクトップアプリケーション)側のユーザーインタフェースの大改良と、サーバー側の機能の充実にある。従来バージョンのOfficeも、“Office System”という名称でシステムとしての機能を打ち出していた。しかし肝心のOfficeのサーバーソフト群は、それほど普及しているという状態ではなかった。そこで多くのユーザーへのインタビューを通じてシステムとして必要な機能を洗い出して、Office 2007上で実現している。
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Office 2007のソフトウェア構成。一般に“Office”と聞いてイメージされるデスクトップアプリケーションはオレンジの部分。青部分のサーバーソフトも Office 2007の一部である(以下のスライドはOffice 2007記者説明会より引用) |
マイクロソフト(株)インフォメーションワーカービジネス本部 本部長の横井伸好氏は、Office 2007についてこう語る。「Office 2007はインフォメーションワーカーの生産性に貢献する豊富なデスクトップ製品と、高度なコミュニケーション・コラボレーションを支える基盤としてのサーバー製品、さらに柔軟な利用形態に対応できるサービスからなる、一連のシステムに成長している。まだまだ多くのユーザーが、Officeはデスクトップアプリケーションのスイートパッケージの名称と思っている。しかしOffice 2007からは、本格的に企業で利用するシステムとして認識してもらえるだけの機能を用意した」
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Officeの変遷。前バージョンのOffice 2003から“Office System”を名乗っていたが、Office 2007では、デスクトップアプリケーションとサーバーの連携が大きく強化された |
ではOffice 2007はシステムとして機能するために、どのような改良が行なわれたのだろうか? それを理解するには、Office 2007の中核となるサーバーソフトの改良について理解する必要があるだろう。
サーバーの中核はSharePoint Server 2007
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SharePoint Server 2007 のトップ画面 |
Office 2007のサーバーソフトの中核となるのは、「Microsoft SharePoint Server 2007」である。以前バージョンである「SharePoint Portal Server 2003」(以下SharePoint 2007)は、ポータルという名称が示すように、イントラネット向けの統合管理機能“Windows SharePoint Service”(WSS)を提供する企業内ポータルソフトであった。しかし、新しい SharePoint 2007ではポータル機能だけでなく、オフィスでの非定型業務に必要なシステムへと進化した。
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SharePoint Server2007 の機能領域 |
ウェブページや各種ドキュメント、電子メールといった現在のビジネスに重要な役割を果たす非定型情報は、今までユーザー個々のパソコン上に蓄積されたり、ファイルサーバーなどに蓄積されていた。そのため、総合的に検索したり、再利用を行なうのが難しかった。そこでOffice 2007では非定型情報と定型情報をSharePoint 2007上で一元的に扱い、必要な情報を従来よりも簡単に入手できるようになっている。
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新しい検索エンジンを使って強化されたSharePoint 2007の検索機能 |
SharePoint 2007で最も重要視されたのが、検索機能だ。検索機能にはWindows VistaやMSN Searchなどで使われている検索エンジンが採用されている。と言ってもまったく同じものではなく、検索のランキング付けなどが業務用途向けにチューニングされている。検索では対象となるデータをクロール(チェック)してインデックスに登録していく。クロール時にはあまりCPUパワーを必要としないように設計されている。
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MSN Searchと同じ検索エンジンがSharePointにも入っている。これにより、サーバーやデータベース上のさまざまなドキュメントを検索エンジンと同じ精度で検索できる |
またSharePoint 2007では、バックエンドにあるデータベース(SQL ServerやOracleなど)に手軽にアクセスして、データを表示する“ビジネスデータカタログ”なる機能がある。データベースへの接続方法などをXML形式の“アプリケーション定義ファイル”に記述しておくと、難しいSQL文などを使わなくても簡単にデータベースにアクセスして、キーワードを元に検索したデータを表示できる。
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SharePoint Server2007 で特に注目される“ビジネスデータカタログ”。バックエンドのデータベースのデータを簡単に検索できる |
“スライドライブラリ”と呼ばれるPowerPointのスライド管理も新しい機能だ。この機能では、PowerPointのスライドをサーバー側にアップロードしておくと、ほかのユーザーがスライド中の任意のページを自由に再利用して、新しいプレゼンテーションファイルを作れる。またファイルやアイテム単位でアクセス権限が設定できる。ファイルのバージョン管理機能も強化されている。メジャーバージョンだけでなく、マイナーバージョンをつけて管理できるようになり、より細かい管理が可能となった。
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SharePoint Server では、ファイル更新をメジャーバージョンだけでなくマイナーバージョンでも管理できる |
SharePoint 2007では、サーバー上のファイルや情報のアップデートは、電子メールだけでなくRSSを使っても配信される。RSS受信をサポートした“Outlook 2007”で、更新の有無を簡単に確認できる。
プロジェクト管理機能も新しくなった。プロジェクト管理ソフトの定番“Microsoft Project Server”のような“ガントチャート”形式の表示により、プロジェクトの進捗把握が容易に行なえるようになった。ただし“Lite版”という位置づけのため、Project Serverのようにスケジュールの遅延や変更など細かなことはできない。あくまでもスケジュールがガントチャートで表示されるだけだ。
これら以外にもオプションとして、Excelの計算機能をサーバー側で処理する“Excelサービス”、InfoPathのフォームのデータ入力をウェブブラウザーで行なえる“Formsサービス”などのサービスが用意されている。
ユーザーインタフェースを一新した
デスクトップアプリケーション
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Office 2007のニューカマー“Groove 2007”の画面。上部には会議録が表示され、下部にはワークスペースが表示されている |
サーバーソフトではないが、Office 2007の重要な新アプリケーションとして紹介したいのが、米マイクロソフトが昨年買収した米Groove Networks社が開発した「Microsoft Groove(グルーブ)2007」だ。GrooveはP2Pソフトに分類されることが多いが、ファイル共有ソフト“Winny” などのような匿名P2Pソフトとは異なる。グループワークのための技術としてP2Pを利用しているソフトだ。
GrooveではP2Pテクノロジーを利用して、社内のネットワークを超えてインターネット上のユーザーともデータを共有できる。メールなどで送りにくい大容量のデータも、Grooveのワークスペースに登録しておけば、自動的にデータの転送が行なわれる。
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Grooveが作る新しいコラボレーション環境では、企業のファイアウォールをくぐり、他社のイントラネット上のパソコンとも連携して作業できる |
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Groove 2007のワークスペースの構成 |
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ファイル共有以外にも、Grooveはディスカッションや予定表、メモ、会議の議事録、スケッチパッドやフォーム、案件管理など多彩なデータが共有できる。社内外を結んだワークスペース上でデータを共有し、ディスカッションをしながらグループでの作業を行なえる。InfoPathで作成したフォームを、Grooveのフォームとして利用することもできる。
新しくOffice Systemの一員となったのは Grooveだけではない。メッセージングサーバー“Exchange Server 2007”も、Office 2007でOfficeグループに移管された。Office 2007では“Outlook 2007”との連携が図られているが、まだ暫定的というイメージが強い。今後のバージョンアップで、Exchange ServerもOffice systemとの連携が強化されることになるだろう。
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Exchange Server 2007 に用意されている“Outlook Web Access”(OWA)。Outlookと同様のユーザーインターフェスを持つメッセージングソフトをウェブブラウザーで実現する |
WordやExcelなど
デスクトップアプリケーションの変更
種類も増えたサーバー製品群に比べると、クライアント側のデスクトップアプリケーションは、それほど増えていない。新しく追加されたソフトはGroove 2007と、今まで別売りになっていた “Communicator”(企業向けインスタントメッセンジャー)などが追加された程度だ。Office 2003で追加された“OneNote” “InfoPath”“Publisher”などは、引き続きOfficeの一員としてバージョンアップされている。また企業向けのウェブページデザインソフト“FrontPage”は名称が変更されて、“SharePoint Designer 2007”としてSharePoint 2007のサイトデザインソフトに変更されている。また日本独自のソフトである、日本語入力IMEは“IME 2007”に、名刺の電子交換ソフトは “InterConnect 2007”に、それぞれバージョンアップされている。
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テキストや画像、音声を書き込める“デジタルノート”のような“OneNote 2007”。ウェブサイトの画面もそのまま取り込める |
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OneNote 2007 には、計算式を書けば自動的に計算してくれる機能が加わった |
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Office 2007のデスクトップアプリケーションで大幅に変更されたのは、ユーザーインタフェース(UI)だ。10年ぶりと言われる今回の改良では、単にメニューが変更されているだけでなく、UIの動作自体が大きく変更されている。
「Officeのクライアントソフト(Word、 Excel、PowerPoint、Access、Outlookの一部)では、今回“結果指向”のユーザーインタフェースを目指しました」と同社インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ マネージャーの細井智氏は述べる。細井氏は機能面では Office 2003でユーザーが求める機能をほとんどカバーした一方で、肝心の機能がどこにあるのか分からないケースが多かったと反省点を挙げた。そこでOfficeクライアントのUIを根本的に変更して、ユーザーが行ないたいことが、ダイナミックにメニュー部分の“リボン”に表示されるようになった。
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新UIの目玉“リボン” は複数のブロックで構成されたグラフィカルなツールバーだ |
Office 2007のデスクトップアプリケーションでは、“リボン”と呼ばれるUIがメニューバーの下に表示されている。リボンはコマンドやシナリオごとに整理されたタブになっていて、ユーザーが行ないたいと思われるコマンドが、ダイナミックに表示される。ツールバーとリボンの大きな違いは、“表示されるコマンドがダイナミックに切り替わる”点と、機能や結果を視覚的に分かりやすく見せる“ギャラリー”機能にある。たとえば文字の書式を選択するときは、書体や文字の大きさのバリエーションがリボン上にグラフィカルに表示され、ユーザーは見本を見ながら簡単に選択できる。
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PowerPoint 2007 のリボンの一例。従来型のツールバーのブロックと並んで、文字を図形化するワードアートの見本ボタンがある |
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リボン上でコマンドの結果を視覚的に表現するのが“ギャラリー”機能 |
さらにOffice 2007を使いやすくしているのが、“ライブプレビュー” 機能だろう。たとえば“Word 2007”で文字の種類やカラーを変更したいとき、ツールバーやリボンにフォントの一覧や色などが表示される。そしてユーザーが一覧にマウスカーソルを合わせるだけで、Wordの本文部分の見た目が自動的に変更されるのだ。これにより、ユーザーは、どのような色やフォントにすればいいか、その場で確認することができる。
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Word 2007に用意された表スタイルのサンプル。一覧表示からデザインを選ぶだけで、簡単に見栄えのよい表ができあがる |
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よく使う図や画像を“クイックパーツ”に貯めておくと、再利用が簡単で画面を見ながら見栄えのよい文書を作れる |
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プレゼンテーションデータを作る従来の PowerPointでは、スライド内に項目を増やすとグラフィックも作り直しになるが、“PowerPoint 2007”ではソフト側が項目が増えたことをチェックして、自動的にグラフィックを作り変えてくれる。たとえば3つの長方形のブロックの中に項目が書かれていて、画面いっぱいにデザインされている場合、PowerPoint 2007では項目を1つ増やすと自動的に4つの長方形のブロックが配置されて大きさも調節され、画面に収まるように自動的にフォントも小さくなる。
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見栄えのよいプレゼンテーションも、PowerPoint 2007ではリボンからサンプルを選択するだけで、簡単に作成できる |
このほかにも、“Excel 2007”やWordなどには、文書を“フィニッシュ(ドキュメント検査)する機能” が追加されている。メールなどの電子媒体でWordやExcelのデータを相手先に送ることは多い。しかし文書内のプロファイル部分には自動的にユーザー名が入ってしまう。そこでOffice 2007では、データ作成者の個人情報を一括して削除する機能が用意されている。さらに、デジタル署名機能も付いているので、文書を完成させた後に、署名を加えて改ざんできなくすることもできる。
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Office 2007では表やグラフに24bitカラーを使用できるようになり、グラフなども表現力が増している |
Office 2007はシステム全体としての機能向上を目指して、サーバー側の機能が大幅にアップしている。デスクトップ側も単に機能を増やすのではなく、使い勝手を良くするためにUIを改良した。これらの利点を考えると、企業ユーザーはOffice 2003などからOffice 2007へとバージョンアップする必然があると言える。特にサーバーシステムとの連携を考えると、Office 2007は使いやすいエンタープライズアプリケーションに進化したと言ってよい。また個人ユーザーにとってはUIの改良により、行ないたいことが視覚的にはっきりわかる“結果指向インタフェース”は魅力があるだろう。ただし、家庭で仕事をしないユーザーにとっては、 Office 2007の新機能もあまり魅力的とは言えないかもしれない。その意味ではビジネスユーザー向けのOfficeと、家庭のパソコンにインストールされ、業務には使用しない個人ユーザー向けのOfficeが、作られてもいいのかもしれない。
今回はOffice 2007の概要について紹介したが、次回以降は各デスクトップアプリケーションのUIや機能、新しいアプリケーションであるGoorve 2007についての詳しい解説、さらにWordや Excelの新しいデータ形式である“Office Open XML Formats”などについても解説していく。
(山本 雅史)
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